―13年前に「戦争論」を出版されましたが、あの頃から比べると、ワールドカップでの盛り上がりなど、若者におけるナショナリズムや愛国心という話もクローズアップされるようになったと思います。先生の作品に対する読者や社会の反応は変わってきたと思いますか?
小林:昔はみんな若者は左翼だったんだけど、今は保守か、なんか”ネトウヨ”みたいな感じになっちゃって、切り替わっちゃったかなという感覚はしますよ、「戦争論」以降。
でも、今度はある意味、国家というものを持ち出しさえすれば自分自身の自意識を底上げできる、という人間が随分増えたなと。
自衛官のような”現場”を持たなくて、プロフェッショナルでもなくて、自分の全く未熟な”個”に対して、”国家”っていうものを出しさえすれば、人を”左翼”だとか”売国奴”とか色んな言葉で非難しつつ、自分だけは尊大に振る舞える。そういうことのために、国歌や日の丸がだんだん利用されてきている。そういう状況に対して、わし自身は嫌悪感を覚えることがあるので批判的になってしまう。そうすると"アンチ小林よしのり"みたいなのが出てくる。ネットの中からは特に。知ったことかという感じだけどね。どっちみち右からも左からも、全てから嫌われるということは前提ですから。何も誰かに気に入られたくて何かを発言しているわけじゃないので、できるだけ人の耳障りなことを言おうと、自然とそうなっちゃう。耳障りだけど言っちゃえとなってしまう。わしはそういうものじゃないと表現する意味はないと思っているので。
最大多数の言葉を全部代弁しちゃって、「そうだそうだ!」って言う同意をもらえるようには描いていないということですよね。
続きを読む